大阪地方裁判所 平成9年(ワ)10932号 判決 1999年1月19日
原告
中田幸男
被告
塩田和幸
ほか二名
主文
一 被告塩田和幸及び同塩田清子は、原告に対し、各自金五一万一一三六円及びこれに対する平成六年一一月二日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告の被告塩田和幸及び同塩田清子に対するその余の請求並びに同塩田一夫に対する請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、原告に生じた費用の二〇分の一九、被告塩田和幸及び同塩田清子に生じた費用の二〇分の一九及び被告塩田一夫に生じた費用を原告の負担とし、原告に生じたその余の費用及び被告塩田和幸及び同塩田清子に生じたその余の費用を被告塩田和幸及び同塩田清子の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、原告に対し、各自金一四二八万三二二二円及びこれに対する平成六年一一月二日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、被告塩田和幸が運転する原動機付自転車が横断歩道を横断歩行中の原告に接触して負傷させた事故につき、原告が被告塩田和幸に対しては、民法七〇九条に基づき、被告塩田清子及び被告塩田一夫に対しては、自賠法三条に基づき、それぞれ損害賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実等(証拠により比較的容易に認められる事実を含む。)
1 事故の発生
左記交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
記
日時 平成六年一一月二日午後〇時頃
場所 大阪府東大阪市長堂一丁目一番二五号先路上(以下「本件事故現場」という。)
事故車両 原動機付自転車(大阪市平野な八八六二)(以下「被告車両」という。)
右運転者 被告塩田和幸(以下「被告和幸」という。)
右保有者 被告塩田清子(以下「被告清子」という。)
歩行者 原告
態様 原告が、本件事故現場を走る道路上の横断歩道を横断歩行中、被告車両と接触し、転倒した。
2 被告清子の責任原因
被告清子は、本件事故当時、被告車両を保有し、これを自己のために運行の用に供していたものである。
3 損害の填補
原告は、本件交通事故に関し、自賠責保険から一二〇万円の支払を受けた。
二 争点
1 事故態様(被告和幸の過失、原告の過失)
(原告の主張)
被告和幸は、被告車両を運転して本件道路の中央部付近を東から西に向かって走行していたところ、前方の対面信号が赤色になっているにもかかわらず、停止することなく横断歩道に進入し、横断歩道を青色信号に従って南から北に横断している原告と道路中央付近で接触し、原告を転倒させた。
被告和幸は、前方の安全を確認することなく、また、赤信号を無視して交差点に進入した過失がある。
(被告らの主張)
被告和幸は、被告車両を運転して西から東に向かって走行していたところ(原告は被告車両の走行方向を東から西と主張するが、逆である。)、横断歩道手前の停止線の約一〇メートル手前で対面信号が青色から黄色に変わるのを認めたが、停止線手前で安全に止まれる距離ではなかったため、道路北側にいた信号待ちの歩行者の安全確認をしながら直進したところ、原告が道路の南側から赤信号を無視して横断歩道を南から北に横断してきたのを認め、回避措置を取ったが間に合わず、被告車両と原告とが接触し、原告を転倒させたものである。本件事故は、原告の信号無視という重大な過失により発生した事故であり、九割以上の大幅な過失相殺が認められるべきである。
2 被告塩田一夫の責任原因
(原告の主張)
被告清子は、本件事故当時一六歳の未成年者であり、その生活を同居している被告塩田一夫(以下「被告一夫」という。)に依存していた。したがって、被告一夫も、本件事故当時、被告車両を自己のために運行の用に供していたものである。
(被告一夫の主張)
被告清子が、本件事故当時一六歳の未成年者であったことは認めるが、その余の事実は否認し、被告一夫が運行供用者に該当することは争う。
3 原告の損害額
(原告の主張)
(一) 治療費 五四万一六〇二円
(二) 入院雑費 四万一六〇〇円
(三) 交通費 二三万〇〇二〇円
(四) 付添看護料 一六万円
(五) 休業損害 一〇二二万円
原告は、本件事故前まで有限会社田舎っ子で稼働しており、平成五年には三五〇万四〇〇〇円の収入があったが、本件事故により退職を余儀なくされた。このため、少なくとも三五か月間の休業を要したのであり、その間の休業損害は次の計算式のとおりとなる。
(計算式) 3,504,000×35/12=10,220,000
(六) 入通院慰謝料 二九一万円
原告は、本件事故後、平成一〇年九月五日症状固定するまで入通院治療した。
(七) 弁護士費用 一三八万円
よって、原告は、被告らに対し、連帯して右損害金合計額一五四八万三二二二円から填補額一二〇万円を控除した一四二八万三二二二円及びこれに対する本件事故日である平成六年一一月二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。
(被告らの主張)
不知ないし争う。
原告は、医師より就労を勧められるに至っている平成七年三月二四日には就労可能であり、それ以降の休業損害は理由がない。
原告の症状は、私病である高血圧症とみられる症状を中心とするものであり、平成七年八月にはほとんど症状に変化がみられず、同日頃には症状固定に至っているというべきものである。
原告は、本件事故が原因で発作性心頻拍症を併発したと主張するが、右傷病は、原告の既往症である高血圧症の合併症とみられるものであって、本件事故との間に相当因果関係はない。
4 寄与度減額
(被告らの主張)
原告は、長期通院加療を受けているが、原告の私病(慢性疾患)による影響が多大にあり、右私病の存在は寄与度として考慮されるべきである。
(原告の主張)
争う。
第三争点に対する判断(一部争いのない事実を含む)
一 争点1について(事故態様)
1 前記争いのない事実、証拠(乙一、被告和幸本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
本件事故現場は、大阪府東大阪市長堂一丁目一番二五号先路上であり、その付近の概況は別紙図面記載のとおりである。本件事故現場を通る道路(以下「本件道路」という。)は、東西方向に走る片側一車線の市道である。その車道の幅員は別紙図面のとおりであり、車道の外側には歩道が設置されている。本件道路の南側には近鉄布施駅があり、北側には住友銀行がある。本件道路には、信号機による交通整理の行われている横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)が設けられている。本件道路の制限速度は時速四〇キロメートルに規制されている。本件事故当時の路面は乾燥したアスファルト舗装であった。本件道路の東行車線を西から走行してきた場合、本件事故現場付近における前方の見通しはよい。本件事故現場付近は、駅前であるため、両車線とも歩道側に駐車車両が停められており、両側歩道にも自転車が並んでいる状態であった。また、本件事故の時間帯はちょうど昼頃であったので、人出が多く、本件横断歩道付近には、信号待ちの人がたくさん立っている状態であった。
被告は、平成六年一一月二日午後〇時頃、被告車両を運転し、本件道路の東行車線を西から東に向かって、時速約四〇キロメートルで走行し、別紙図面<1>地点において、対面信号が青色表示であるのを確認し、同図面<2>地点で同信号が黄色表示に変わるのを認めたが、停止線まで一〇メートルほどしかなく、停止線前で安全に停止できる距離ではなかったため、本件道路北側の本件横断歩道付近で信号待ちしている歩行者に目を配りながら、直進したところ、同図面<3>地点において、本件道路南側から横断歩道上に出てきた原告(同図面<ア>地点)に気づき、急ブレーキをかけたが間に合わず、同図面<4>地点において原告に衝突し(その時の原告の位置は同図面<ア>地点)、被告車両は同図面<5>地点に停止した。原告は同図面<イ>地点に転倒した。右衝突時点の被告車両の対面信号は黄色表示であった。
以上のとおり認められる。この点、原告は、本人尋問において、被告車両は東から西へ走行してきたとか、原告は青信号を確認してから本件横断歩道を渡り始めたなどと右認定に反する供述をする。しかし、原告は、本件事故当日の午後〇時三〇分頃、救急車で牧野病院に搬送され、本件事故のことを問われるも「交差点を北から南に歩行中、五〇ccの単車が西から東に走って来て衝突した。事故当時の事は覚えておらず、来院時頭がボーとして〇時二五分頃はっきりしてきた」という趣旨のことを答えており(乙三)、この時点では、被告車両が西から東に走ってきたと言っているし、自分の横断方向についても、平成一〇年九月二九日付準備書面では南から北へ横断中であったと主張するなど、首尾一貫していない。右事情に照らすと、本件事故態様に関する原告の供述は措信しえず、他に前認定を左右するに足りる証拠はない。
2 右認定事実によれば、本件事故は、被告が前方を注視しながら走行すべき注意義務があるにもかかわらず、進行方向に向かって左側に立っている歩行者に気をとられ、右前方に対する注意がおろそかになったことがその一因となっているものと認められる。しかしながら、他面、本件横断歩道にあっては信号機による交通整理が行われていたところ、原告は対面信号が赤色表示であるにもかかわらず、右表示に従うことなくそろそろ青色に変わるであろうとの見込みで本件道路を横断したものであることにかんがみると、被害者である原告自身の落度も重大であるといわざるを得ない。したがって、本件においては、一切の事情を斟酌し、五割の過失相殺を行うのが相当である。
二 争点2について(被告一夫の責任原因)
被告清子が本件事故当時一六歳の未成年者であったことは当事者間に争いがないが、右事実をもって被告一夫が運行供用者であると認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
三 争点3について(原告の損害額)
1 傷病・治療経過等
証拠(甲八、乙二ないし四)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
原告は、本件事故日である平成六年一一月二日、救急車にて牧野病院に搬送された。同病院では、頭部打撲及び裂創、背部打撲(第一二胸椎圧迫骨折疑い)、左手関節打撲の傷病名で診療が開始され、同日入院となった。同日のX線検査では、第七、八、一二胸椎にわずかに変形が認められたが、圧痛は不明瞭であった。血圧は、一七八ないし一一〇であった。原告の主訴は、頸部痛、胸部痛、背部痛等であったが、入院後のX線検査によると、頸部は正常であり、第七胸椎の変化はOA(骨関節症)変形、第一二胸椎の変化は陳旧性の変形、第八胸椎は新鮮な圧迫骨折と認められた。同月二八日からは装具(胸椎コルセット)療法が開始され、同年一二月三日には同病院を退院した。退院後は通院による治療を受けたが、平成七年一月一三日には頸部から背部痛、腰痛の外、左手の痛みが続くとされたが、X線検査の結果は正常範囲内であり、ベーラー氏体操が指示された。背部痛は継続していたが、同年二月二四日のX線検査では、第八胸椎に硬化が認められ、同年三月二四日にも、X線検査上第八胸椎の骨硬化が認められたことから、医師から仕事をするように勧められたが、やる気のなさそうな回答をした。同日、「嘔気、嘔吐、頭痛」を訴えたが、血圧は二〇四ないし一一〇であり、医師から高血圧症と診断された。同年四月二一日の心電図では左室肥大が認められ、医師から降圧剤を勧められたが、これを拒否した。その後、左手の痛みが続くとか、左耳鳴り、難聴を訴えた。同年八月二五日には、医師から高血圧について説明されるも、「おまじないをすれば治る。本日は金のたまをもっていないので血圧があがっている。自覚症状もないし、精査・治療を受ける気はない。」という趣旨の回答をし、さらに医師から脳内出血、眼底出血、心不全について説明されたが、「自分は大丈夫」と答え、医師は、カルテに「ギブアップ」と記載した。川口眼科から、同年八月二八日付で、原告に結膜下血腫(左)、遠視(両)が認められるが、これらは本件事故と関係ないとの回答があった。同年九月二二日には、脊椎の可動域制限については、前屈に制限はあるが、背屈はわずかに制限となっており、この原因として想定されるものとして、カルテ上「加齢、肥満、失職、あせり」と記載されている。同日のX線検査は正常であった。その後も、頸部痛、左手関節痛等を訴えたが、同年一〇月二八日には、高血圧、肥満に関し、栄養指導が行われ、同年一二月二六日のカルテには、左頸痛、手関節痛、肘痛につき、慢性脳症候群に近いかという医師の所見が述べられている。平成八年二月二七日のカルテには「仕事をすすめるも・・・・」と記載され、同日再度医師から高血圧による脳出血・心不全の可能性等の説明を受けたが、降圧剤の内服を拒否したので、今後血圧に関して問題が起きても同病院や医師に迷惑をかけない旨の念書を取られている。平成八年七月三〇日からは、骨粗鬆症も傷病名に追加された。平成八年一一月二日実施のMRI検査では、検査担当者から、第七、第一二胸椎と思われる部分に骨折があるが、脊髄や神経根への影響ははっきりしないとの所見が述べられ、これを受けて医師は「MRI問題なし?」とカルテに記載している。平成九年三月一四日のX線検査では、第一二、第七胸椎の変形、第六/七、第一一/一二胸椎椎間板の軽度狭小化が認められた。同日実施のMRI検査上は問題なかった。同日のカルテには、狭心症発作、頻拍は整形外科的症状とは関係ないと考える旨の内科医師の所見が述べられている。平成九年一一月七日のカルテには、第一二胸椎陳旧性骨折、骨粗鬆症と記載されている。
牧野病院の馬場医師は、原告代理人からの弁護士照会に対し、<1>症状固定時期は平成九年一二月心臓発作が安定した頃と考える、<2>背痛、腰痛、軽い心臓発作も時に起こるので原職(調理作業)には就労不適と考える、<3>発作性心頻拍症は外傷と直接的な関係はないが、二次的に起きたものと思われる、<4>第一二胸椎圧迫骨折は本件事故によるものであると回答している。
牧野病院の馬場医師は、平成一〇年九月五日をもって原告の症状が固定した旨の診断書を作成したが、同診断書によれば、傷病名として、頭部裂創、第八、一二胸椎圧迫骨折が掲げられ、自覚症状として、頸痛、背痛、腰痛、左上肢・左膝部痛、胸円苦悶(一渦性)があるとされ、他覚症状及び検査結果として、X―P上、第八、一二胸椎変形、心電図上、発作性上室性頻拍症があるとされ、胸円苦悶(一過性)は二次的に発生したものという所見が述べられている。
高血圧は、その初期はほとんど無症状であるが、これが続くと、頭重感、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐等の症状がある外、長く続くと心肥大を起こしたり、動悸、息切れ、不整脈等の症状を起こすことが知られている。
以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。
2 原告の症状(発作性心頻拍症)と本件事故との因果関係
発作性心頻拍症と本件事故との因果関係については、発作性心頻拍症は外傷と直接的な関係はないが、二次的に起きたものと思われるという馬場医師の意見があるが、同意見における「二次的」という言葉の意味自体非常に多義的であり、その根拠が何ら述べられていない以上、右意見から本件事故によって発作性心頻拍症が生ずるメカニズムを具体的に確定することはできないし、<1>脊椎の可動域制限の原因としてカルテ上「加齢、肥満、失職、あせり」と想定されていること、<2>平成九年三月一四日のカルテには、狭心症発作、頻拍は整形外科的症状とは関係ないと考える旨の内科医師の所見が述べられていること、<3>第七胸椎の変化はOA(骨関節症)変形、第一二胸椎の変化は陳旧性の変形と考えられること(なお、馬場医師は、第一二胸椎圧迫骨折は本件事故によるものである旨弁護士照会に応じて回答しているが、診療の初期の頃から第一二胸椎の変化は陳旧性の変形あるいは骨折であるとカルテ上記載されていることに照らすと、同医師の右回答は第一二胸椎と第八胸椎とを取り違えて回答したという疑問を払拭できない。)、<4>第八胸椎には本件事故による圧迫骨折が生じたが、その後骨硬化した後は、特に問題となるX線所見はみられないこと、<5>原告には、平成七年四月二一日の時点で左室肥大が認められていること、<6>高血圧が長く続くと心肥大を起こしたり、動悸、息切れ、不整脈等の症状を起こすことがあることに照らすと、原告の傷病のうち、発作性心頻拍症については、原告の私病としての高血圧に基づくものである可能性が相当程度存するから、これと本件事故との間に相当因果関係が存在すると認定するには不十分というべきであり、他に右相当因果関係の存在を認めるに足りる証拠はない。
そして、前認定事実(第八胸椎の治癒経過、原告の治療における治療の重点の推移、医師からの指示勧告等)に照らすと、本件事故と相当因果関係にある原告の症状は、遅くとも平成七年八月三一日には固定したものと認められる。
3 損害額(過失相殺前)
(一) 治療費 三二万〇六五二円
原告は、本件事故と相当因果関係にある治療費として、三二万〇六五二円を要したものと認められる(甲三5ないし8、五1ないし5)。
(二) 入院雑費 四万一六〇〇円
原告は、本件事故による傷病の治療のため、平成六年一一月二日から同年一二月三日まで三二日間入院したから(前認定事実)、一日あたり一三〇〇円として合計四万一六〇〇円の入院雑費を要したと認められる。
(三) 交通費 五万二〇二〇円
原告は、本件事故と相当因果関係にある通院交通費として、五万二〇二〇円を要したと認められる(弁論の全趣旨)。
(四) 付添看護料 認められない。
付添看護が必要であったことを認めるに足りる証拠はない。
(五) 休業損害 一六〇万八〇〇〇円
証拠(甲六)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故当時、有限会社田舎っ子で稼働し、年間三五〇万四〇〇〇円の収入があったものと認められる。
そして、前記1の認定事実(通院状況、医師の指示・勧告の内容、診断内容等)に照らすと、原告は、本件事故により、<1>本件事故日である平成六年一一月二日から同年一二月三日までの三二日間は完全に休業を要する状態であり、<2>同月四日から症状固定日である平成七年八月三一日までの二七一日間は平均して五〇パーセント労働能力が低下した状態であったと認められる。
以上を前提として、原告の休業損害を算定すると、次の計算式のとおりとなる。
(計算式) 3,504,000×32/365+3,504,000×0.5×271/365=1,608,000
(六) 入通院慰謝料 一三〇万円
原告の被った傷害の程度、治療状況等の事情を考慮すると、右慰謝料は一三〇万円が相当である。
4 損害額(渦失相殺後)
右1に掲げた損害額の合計は、三三二万二二七二円であるところ、前記の次第で五割の過失相殺を行うと、一六六万一一三六円となる。
四 争点4について(寄与度減額)
被告らは、原告が長期通院加療を受けていることにつき、原告の私病(慢性疾患)による影響が多大にあるとして、右私病の存在は寄与度として考慮されるべきであると主張するが、当裁判所が本件事故と相当因果関係があると認定した範囲の損害に関して原告の私病(慢性疾患)による影響があることを認めるに足りる証拠はない。したがって、被告らの右主張を採用することはできない。
五 原告らの損害額(損害の填補分控除後)
前記のとおり過失相殺後の損害額は一六六万一一三六円であるところ、原告は、本件交通事故に関し、自賠責保険から一二〇万円の支払を受けているから(前記争いのない事実)、これを前記過失相殺後の損害額から控除すると、残額は四六万一一三六円となる。
六 弁護士費用 五万円
本件事故の態様、本件の審理経過、認容額等に照らし、相手方に負担させるべき原告の弁護士費用は、五万円を相当と認める。
七 結論
以上の次第で、原告の被告和幸及び同清子に対する請求は、右被告両名に対して連帯して五一万一一三六円及びこれに対する本件不法行為日である平成六年一一月二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、同一夫に対する請求は、失当であるから、主文のとおり判決する。
(裁判官 山口浩司)
別紙図面 交通事故現場見取図